黄色い水芭蕉

2014-04-30

 尾瀬に、水芭蕉が咲く時期になると何時も思い出すことがある。
子供が小学生の頃、テレビで尾瀬の特集をしていた。
「尾瀬沼の水芭蕉が見たい」と妻に話すと「今、何時と思っているの?」「まだ、夜の10時」等など言っているうちに行くことになる。二人の子供を、ワンボックスカーに布団ごと積み込み大清水に向けてハンドルを切る。
金精峠に差し掛かったころ生憎の雨。すかさず「だから止せばよかったのに」と言われ、天気を確認せず出発したことに反省しながら「雨の水芭蕉も素敵だよ」と言ったら車内の時間が止まった。
 二人の子供が目をさまし「どこに行くの?」「ここはどこ?」と質問をしてくるが、妻の説明には愚痴が多く入っているので、寝ぼけた子供には理解することは難しい。再び夢の中へ戻っていった。
 早朝に、大清水に到着したが生憎の雨模様。協議の結果、女二人は近くの温泉へ、男二人は尾瀬沼に行くことになる。雨の中、二匹の雨蛙は三平峠に向けて霧の中に消えて行った。
三平峠の雪渓で長男が「オシッコの飛ばしっこやろう」と言い出した。急峻な雪渓にステップを切り足元を安定させた後、二人の男がそれぞれのコック(cock)を準備する。アゲンストの谷風が二人の股間を吹き抜けなお一層の緊張感を高める。長男は、45度にセットし放水を開始した。谷からの風に押し戻され思ったように距離が伸びないようだ。「甘い」ゴルフでもアゲンストの時はライナーのような低い弾道で風の抵抗をできる限り回避して打つのが常識だ。
私は、32度にセットしたが更に前下がりの谷からの吹き上げる風に対抗するため、28度に微調整して放水すると長男を軽くオーバーした。
長男は、慌てて遠くに飛ばそうと腰を突き出すが反って距離が落ちている。 勝負が決まったので放水を中止すると、「僕の方が長いね」とまだ放水している。 相当オシッコを我慢していたようだ。この勝負、引き分けにしよう。
  雲を見ると層雲から乱層雲に変わってきたので早々に引き返すことにした。 帰路になったら、長男のスピードが一段と上がった。早く会いたい女性は私と同じらしい。
  三平峠の雪渓に、黄色い水芭蕉が二つ並んで咲いていたことを報告しよう。

*外国人に私の仕事はコックです。と話すと大爆笑されるので要注意。
(cookクックは料理人、cockコックは水道の蛇口)

Copyright(c) 2011 KANESAWABENTENEN All Rights Reserved.