健康寿命とは
安達太良山の、爽快感が忘れられず登山を始める。
その後、三月に結婚して五月に北穂高岳に登り更に好きになったが、頻繁に発生する雪崩をみて単独行動では長生きできないことを悟る。帰宅したら、周りの空気が春山のように冷たく感じた。
安全登山の基礎を学ぶため山岳部の門を叩く。日立市入四間町に本部を持つ常北山水会山岳部だ。リーダーは、新田次郎の小説で有名な「ある町の高い煙突」の主人公、関 右馬允氏(故人)の長男で関 勝馬氏(故人)。
茨城県で、一番の歴史があり厳しい山岳会と入部してから知り後悔したが手遅れになる。予想したとおり、厳しく個性的な人ばかりがいた。
「蓼(たで)食う虫も好き好き」と言うが、山菜のように適度に灰汁(アク)があり味わい深い人が多かったが、メンバーの中には熊も食べない栃の実のような人もいた。
そのような癖のある先輩諸兄に、岩登り、雪山、山スキー、沢登りを叩きこまれたころ、笠松運動場にクライミングボードが設営された。
スポーツクライミングという分野のため、ロッククライミングをしているものからは軽視されたが、安易に挑戦したところ全く歯が立たない。壁全体がオーバーハング状態でムーブ(体のバランス体勢)ができなければ5メーターも登れない。高さは17メートルある。余りの悔しさから、笠松詣でが始まり間もなく13年目を迎えるが、年齢に関係なく今の方が数倍強くなっている。
「年を取ると失う物ばかり」と言われるが、筋肉は鍛えれば鍛えるほど答えてくれるから有難い。また、最近の私の趣味は健康寿命を伸ばすための貯筋(チョキン)にすることにした。
私より年上でクライミングを楽しんでいるのは、勝田あゆみ山好会のKさん76歳、水戸葵山岳会のKさん73歳、Mさん68歳のスーパー爺がいる。
私の筋力では三人の足元にも及ばない。
三人の健康寿命は、一体何歳まで伸びるのだろうか? 三人とも、80歳までは登りたいと言っているが80歳は日本人男性の平均寿命だ。クライミングでの80歳は神の領域に近いと思うが、80歳でヒマラヤに登頂している三浦雄一郎がいるから可能かもしれない。
私も、眩しく輝く三人のスーパー爺を目標に人生の壁を登り続けたいと思う。