キジの産卵

2015-08-27

 日本を代表するものとして、国歌は君が代、国花は菊もしくは桜、国石は水晶、国鳥はキジになっており、特に、キジは富士山と同様に日本人にとって象徴的な存在だ。
 あちこちの農耕地に留鳥として棲息しているが、臆病で鳴き声は耳にしても姿を目にすることは少ない。
 最近、忙しさを理由に畑を放っておいたら、私の身長位までセイタカアワダチソウが伸びてしまった。外来植物の繁殖力の強さに感心しながら草刈機のエンジンをかけ一反(300平方メートル)の除草を始めたところ、畑の中央でキジが卵を産んで温めていた。
エンジン音を響かせながら近づいても私を睨みつけて微動だにしない。
 この状況下で、この余裕は何?
 一瞬、「キジ鍋」が脳裏をかすめたがすぐに消えた。凝視すると卵を抱えた姿は、エリザベス女王ように気品溢れる高貴な容姿にみえた。
 キジは、まったく恐れることなく優しい目を私に向けている。もし、これが逆の立場だったらどうだろう、キジのように死を恐れず、逃げることなく、毅然としていられるのだろうか? 考えるだけで恐ろしくなった。
 普段は臆病で姿を現さないキジも、産卵のためにというスイッチが入ると全てのことが無になるようだ。「のために」命を捨てられる姿に熱いものを感じた。
お母さんキジの、オーラに圧倒され思わずエンジンのスイッチを切ることになったが、私の涙腺のスイッチはオンに入り、オフになるまで暫くの時間を要した。
 薩摩藩の家臣が、西郷隆盛に仕事をする上での心構えを質問したところ、西郷隆盛は「心一(いつ)なれば敵なし」と言ったそうです。家臣が更に説明を求めると、「キジが産卵する時の気持になって仕事をすれば、できない仕事は何もない」と答えたそうです。
 山火事の後、キジが卵を抱いたまま焼け死ぬ話を聞いたことがありますが、今回のことでキジが国鳥になる由縁に納得しました。
 創設10周年を迎えた金沢弁天園も「のために」を大切に国鳥の精神でご利用者、入所者様に接していきたいと思います。

kiji

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